その金を追え!: データ・ジャーナリズムとクロスボーダー・コラボレーション
世界の多くの人々の生活に影響を与える組織犯罪や汚職を暴くことに興味のある調査ジャーナリストと多くの市民は、日を追うごとに、これまでになかった情報へアクセスすることができるようになった。膨大なデータが政府や他の機関によって公開されたオンラインで利用できるようになり、そして、すべての人に必要な情報が入手可能になった。しかし、同時に、政府の汚職に係わる役人や組織犯罪グループは悪行を隠すために、最善を尽くして情報を隠している。彼らはすべての社会レベルにおいて紛争、飢餓、またはその他の危機による混乱を引き起こし人々を暗闇の中に陥れる努力をしている。
そのような悪行を暴き、汚職や犯罪のメカニズムを防ぐのは調査ジャーナリストの義務である。
たとえ、最も厳しい環境にあっても、ジャーナリズムを通じて犯罪や汚職の主要な活動を調査するにあたってによい方向へと導いてくれる主要なガイドラインが3つ存在する。
- 国外に目を向ける
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多くの場合、調査ジャーナリストが対象としている国外からの情報の入手の方が、その国の情報を入手するより容易である。他国の情報へのアクセスに関する法律に基づく、あるいは国外において収集された情報データベースこそ、まさにあたなが扱っている問題に追加する必要があるものである。その上、汚職をしている役人と犯罪者は自身が盗んだ金を手元に置いておこうとはせず、海外の銀行や外国に投資しようとする。そう、犯罪はグローバルである。インターネット上には国際的に移動するそのような金を追跡する上で調査ジャーナリストをアシストするデータベースは多く存在する。例えば、 Investigative Dashboard はジャーナリストが国境を超えた金の追跡するのを可能にしてくれる。
- 調査ジャーナリストのネットワークを活用する
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世界の調査ジャーナリストはグループを作っている。 例えば、 The Organized Crime and Corruption Reporting Project 、 The African Forum for Investigative Reporting 、 The Arab Reporters for Investigative Reporting 、 The Arab Reporters for Investigative Journalism 、 The Global investigative Journalism Network のようなグループである。 ジャーナリストは日々の国際的ジャーナリズム情報が交換されているIJNetのようなプロのジャーリズムプラットフォームを活用することも出来る。同じような問題や状況に直面している記者たちがグループを形成しているため、情報や手法の交換が有効である。また、これらのネットワークはメーリング・リストやSNS上のグループを活用しているので、仲間のジャーナリストにアドバイスを求めたり、相談することは非常に容易である。また調査ストーリーのアイデアはこれらのフォーラムやメーリング・リストから収集することが可能である。
- テクノロジーを用い、ハッカーとコラボする
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ソフトウェアは調査ジャーナリストの情報へのアクセスとその処理を助けてくれる。多様な種類のソフトが、調査におけるノイズを除去したり、大量のデータから意味を掘り下げること、あるいはストーリー作るために必要なドキュメントを発見することを助けてくれる。情報を解析するための既成のソフトが多く存在すること、さらに重要な事に、ジャーナリストは多くのプログラマーが相談すれば助けてくれることについて知っておく必要がある。これらのプログラマーやハッカーはどのように情報を入手して、どのようにデータを扱うべきか知っている。そして彼等は調査のために多くの協力を行ってくれる。これらのプログラマー達(その多くはオープンデータ運動のメンバーでもある)は犯罪や汚職との戦いにおいて大きな仲間となってくれると共にジャーナリストを情報を分析するための手助けもしてくれるだろう。
プログラマーと市民のよいインターフェースの例は ScraperWikiである。 これはジャーナリストがプログラマーにWebサイトからデータを入手するために助けを求めることの出来るサイトである。調査ダッシュボード maintains a list of ready-made toolsもまた、ジャーナリストがデータを処理、分析するのを助けてくれる。
これらのガイドラインのよい例は多くの事例で見つける事が出来る。例えば、Khadija Ismayilovaの例がそうである。経験のあるアゼルバイジャン人の彼女は情報の入手に関して、厳格な環境にある調査報道記者である。Ismayilovaはアゼルバイジャンのより良い信頼できる公共の情報を作成するために日々の困難を克服した。2011年の6月、 Radio Free Europe/Radio Liberty’s (RFE/RL) の調査報道記者、Khadija Ismayilovaはアゼルバイジャン大統領の娘Ilham Aliyevが秘かに、 a fast-rising telecom company, Azerfon をパナマのオフショア企業を経由して経営していた事を伝えた。それは170万人近い登録者や、国土の80%をカバーしていること、当時アゼルバイジャン唯一の3Gサービスの提供者であることを誇っていた。Ismayilovaはその企業のオーナーが誰であるかを見つけることに3年を費やしたが、政府は企業の所有者が誰であるかを公開することを断わり、何度も企業の所有権について嘘をつき続けてきた。彼らは企業がドイツに本社を置くSiemens AGによって所有されているとさえ主張した。その主張はSiemensによってきっぱりと否定された。アゼルバイジャンの記者はなんとかしてAzerfonが数少ないパナマの指摘企業によって所有されていることを見つけ出そうとしていた。彼女が外部に助けを求めるまで、この試みは行き詰まりになっていた。2011年の初頭、Ismayilovaは、調査ダッシュボードを通じて、パナマに籍を置く企業はプログラマであり活動家であるDan O’Huiginnによって開発された アプリケーション によって追跡できることを知った。このツールを用いて、彼女は終に大統領の2人の娘がパナマに籍を置くビジネスを通じて通信企業に係わっていることを明らかにした。
実際には、O’Huiginnはオフショア天国として広く知られ、いくるかの不正を働く公務員によって金を隠す場所として用いられている(前エジプト大統領Hosni Mubarakの取り巻きから、南米やバルカン諸国の不正を行う公務員まで)パナマにおける汚職について報告を行うためにジャーナリストを助けるツールを作った。プログラマーかつ活動家が行ったことはWebスクレイピングと呼ばれている。調査を行うものによって使えるように、情報の抽出と再形成を可能にする手法である。O’Huiginnは パナマの企業登録をスクレイピングした、このレジストリはオープンであるにも関わらず、調査報道者が探している企業の名前を知ることを可能にしている。これは、資産の動きを追跡するために記者は一般に個人の名前を探し求めているので、調査の可能性を限定しているといえる。彼はデータを抽出して、新たなWebサイトを作成して、個人名で検索を可能にした。新たなWebサイトは多くの国の調査記者に情報を探し求めることを可能にし、政府や議会の公務員達の名前を探すことや彼らが秘密裏に企業をパナマにおいて所有しているかどうかをチェックすることを可能にする(ちょうどアゼルバイジャンの大統領家族がしたように)。
より良い情報へのアクセス以外にも上記に強調したガイドラインを使用する長所が存在する。一つには敵対的な環境下において働く調査記者を保護することおよび、損害を最小限に食い止める事である。これはあるネットワークにおいて働くとき、ジャーナリストは孤立しているわけではないという事実に基づく、調査報道記者は外国の多くの同僚と働いているため、犯罪者にとって彼らのさらされている悪事に責任のある人たちをさけることが難しくなる。結果として、政府や汚職を働く役人にとって報復を成し遂げる事が難しくなる。
もう1つ心にとどめておくべきことは、情報はある地域においてとても価値があるように見えないものが他の地域に致命的に重要であることである。調査ネットワーク間の情報の交換はとても重要なストーリーを明らかにすることを導くことができる。例えばルーマニア人がコロンビアにおいて1キログラムのコカインとともに逮捕されたという事実はおそらくボゴタにおいてはフロント・ニュースにはならないが、もし現地のレポーターが逮捕された人間がブカレストで政府に勤める人間であるということを見つけ出せば、ルーマニアの大衆にとってはとても重要なものになりうる。
効率的な調査報道は調査ジャーナリスト、プログラマー、その他のよりグローバルで公平で綺麗な社会を実現するのに貢献するためにデータを使用したい人達の協力作業の結果である。
— Paul Radu, Organized Crime and Corruption Reporting Project