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外部の専門家を活用する

2010年3年月、オランダのユトレヒトで活動するデジタルカルチャーの法人SETUPが "Hacking Journalism"(ジャーナリズムをハックする) と題したイベントを開催した。イベントを通じて、ディベロッパーとジャーナリストとのコラボレーションを促進させるためである。

参加したプログラマは「かっこいいアプリケーションをつくるためにハッカソンを開くことがほとんどだが、データの中の面白いストーリーについて私たちはなかなか気づくことができない。つくったモノに社会的な文脈がないのだ」と通常のハッカソンについて話し、一方でジャーナリストは「データ・ジャーナリズムの重要性は認識しているものの、技術的なスキルが十分にないのでつくりたいものをつくることができないのだ」と自身の認識を話していた。

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Figure 10. ハッカソン:ジャーナリストとディベロッパーの協業 (photo by Heinze Havinga)

私の働く地域の新聞社では、ニュースルームにプログラマを雇う資金やインセンティブがなかった。このころのオランダにとって、「データ・ジャーナリズム」はまだまだ見知らぬ存在だった。

ハッカソン式のイベントは大成功だった。コラボレーションにぴったりのリラックスした雰囲気で、会場にはピザや栄養ドリンクもたくさんあった。 RegioHack (“地方ハック”の意)は、私の勤めている地域の新聞社 De Stentor が主催し、姉妹紙の TC Tubantia, と Saxion Hogescholen Enschede が会場を提供してくれた。

イベントの環境は以下のようなものだった: 30時間のハッカソンである。誰でも参加できる。食べ物と飲み物を支給。参加人数30人を集めて、それぞれを6つのグループに分けた。グループごとに、犯罪、健康、輸送、安全、加齢とパワーなどのトピックを設定し、それに焦点を当てて取り組んでもらう。主催した我々は、特に以下のような目標を設定した:

ストーリーを見つける

我々にとって、データジャーナリズムは新しくて未知のものだ。そこでその有用性を証明するためには、上手に組み立てられたストーリーを通じて伝える必要がある。データを用いた、少なくとも3つのストーリーを生み出すことを計画した。

人々をつなげる

我々ジャーナリストは、データジャーナリズムの仕掛けは知らないし、わかったふりもしない。ただ、ジャーナリスト、学生とプログラマの3人を30時間同じ部屋に居座らせ、知識やインサイトを共有してもらいたいのだ。

ソーシャルなイベントを開く

新聞社はハッカソンはもちろんのこと、あまり社会に開いたイベントを開催しない。実際にソーシャルなイベントがどのような結果を生み出せるか実験したかったのだ。ともすれば、非常に密度の高い時間―30時間他人と専門用語の通じない者同士が話し合う時間―をピザや栄養ドリンク、ソーシャルな雰囲気づくりによって、ジャーナリストとプログラマが快適でコラボレーションしやすい環境をつくりたかったのだ。

イベントの前、TC Tubantiaは警官だった夫をなくした未亡人とのインタビューをしたばかりだった。夫人はかつて夫が働いていたころについて本を書き、夫が管理していた1945年以来のオランダ東部のすべての殺人事件の登録記録文書を持っていた。通常であれば、文書をウェブ・サイトで公開するだけになってしまうのだが、今回は Tableau softwareを使ってダッシュボードを作った 。このソフトウェアを使ってどんなものが生まれたか、RegioHackのサイトに ブログを書いた

ハッカソンで、あるプロジェクトグループは地域の学校の開発と高齢化をテーマに取り組んだ。 将来を投影するビジュアライゼーションを作ることで、数年後に入学者の減少で困る町がどこなのか理解することができた。私たちはこうした知見を元に、地域の学校に起きる影響について記事を書いた。200個のツイートという意味の「De Tweehonderd van Twente 」という野心的なプロジェクトをスタートさせ、地域のツイッターユーザーで最も影響力の大きいユーザーを判定し、データベースを作った。

我々はまた、De Tweehonderd van Twente (200のTwente)というとても野心的なプロジェクトを開始した。我々の地域で最も影響力を盛っているのは誰かを調べて、データベースを作るという物だ。天文学的な数の計算を経て、影響力のある組織との関係が強いのは誰かを示したリストを作った。これは今後記事を書くいい材料になるだけでなく、(このリストを通じて記事の執筆を生み出すことができるだけでなく、)ジャーナリストにとっても強力なツールとなる。誰と誰が関係性をもっているか、データベースでその答えを見つけ、日常的に使うことができる。また、このデータベースは文化的な価値も持ち合わせている。芸術家から、このデータベースを使ったインスタレーション・アートをつくりたい、との問い合わせもあった。

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Figure 11. データジャーナリズムを通じて出会った人々が新しいコミュニティをつくる (写真: Heinze Havinga)

RegioHackのあと、ジャーナリスト達はこれまでの伝統的なジャーナリズムにデータ・ジャーナリズムを付け加え生かすことができるものだと考えるようになった。私の同僚たちは、このイベントで学んだことを生かし、さらに野心的で技術的なプロジェクトを作り始めた。たとえば、住宅の管理コストについてのデータベースなどだ。私はこのデータを元に、Google のFusion Tableを使って、 インタラクティブな地図をつくった。読者がデータを操作でき、その結果をクラウドソーシングしたのだ。 (事例はこちら)。Fusion Tablesをつかって、どうやって地図を使ったのかたくさん質問があったので 解説のビデオも用意した。

私たちが得た学びはなにか?たくさんある。同時に障壁もたくさんあった。4つの気づきがあった。

どこから始めるか:問いか、データか

どのプロジェクトを情報を探そうとするとそこで失速してしまった。ほとんどの場合、ジャーナリスティックな質問から始めるのだが、そのあとが問題だ。データがあるのか?どこで見つけられるか? こうしたデータを見つけたら、質問に答えることができるだろう。ジャーナリストは記事のために調査をするときはどこで情報を手にいることができるか基本的には知っているのだが、データジャーナリズムとなると、どこでその情報を入手できるかほとんどの人が知らなかった。

ちょっとした技術知識

データ・ジャーナリズムはとても技術的な学問だ。情報を集めたり、結果をビジュアライズするためにプログラミングをしなければならない。素晴らしいデータ・ジャーナリズムのために必要なことは二つ:ジャーナリスティックな経験と洞察力、そしてあらゆるデジタルに関する技術的なノウハウ。RegioHackでは、なかなかこれらを持ち合わせた人物はいなかった。

ニュース価値があるか

参加者は様々なソースの相関関係からニュースを見つけるより、ひとつのデータ・セットを使って、ニュースを見つけようとする傾向にあった。その理由は、データ・ジャーナリズムには統計学的な知識を元に、ニュースを確定する必要があるからだ。

毎回繰り返すことは何か?(データ・ジャーナリズムの型とは?)

上記すべてを踏まえると、毎回繰り返す決まった型(ルーティン)は存在しないのだ。参加者はそれぞれにスキルを持っているが、ただいつどのように使えばいいのかわからないのだ。あるジャーナリストは「ケーキを焼くようなもの」と言い表した。「材料は全部そろっているんだ。小麦粉、卵、牛乳など。それを一緒くたにして混ぜ、ケーキができるといいなあ、と願う。まるでそんな状態だ。」と話したのだが全くその通りで、材料は揃っているけれどレシピがわからないのだ。

では、これからどうするか?私たちの行った初のデータ・ジャーナリズムの経験は、この分野で頑張ろうとしているプログラマやジャーナリストに役立つと思う。これをレポートにする予定だ。

また、RegioHackをハッカソンの形で続ける方向性で考えている。楽しくて、為になって、生産的な形でデータジャーナリズムの紹介をできるのだから。

仕事の現場でのジャーナリズムについては、ニューズルームとの統合をしなければならない。ジャーナリストはデータ思考を養うことを、これまでの引用やプレスリリース、理事会に加えてしていかなければならない。RegioHackを通じて、データ・ジャーナリズムが単なる流行ではなく、より情報に満ちた、特徴的な記事を書くことができ、読者に紙とオンラインで異なる記事を提供することができるのだと示すことができたと思う。

Jerry Vermanen, NU.nl