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データで始まり、ストーリーで終わる

読者を引き込むためには、見出しの数字で注目させなければならない。元のデータに当たらなくても、ストーリーだけでちゃんと読めるものである必要がある。見出しはエキサイティングなものに。そして、読者は誰なのかを忘れてはいけない。

こうした事例として、TBIJ(The Bureau of Investigative Journalism:非営利の調査報道機関)が、欧州委員会の財政資料 Financial Transparency Systemをソースに報道したプロジェクトがある。このストーリーは特徴的な切り口で、データにアプローチしている。

データを見てみると、「カクテル」「ゴルフ」「日帰り旅行」といった用語が見られる。項目を選ぶと、欧州委員会がこうした事柄に費やした金額がわかる。ここから様々な疑問が生じ、ストーリーとなっていく。

だが、キーとなる用語が必ずしも思い通りになるとは限らない――時には自分が何を求めているのか、考え直す必要もあるだろう。このプロジェクトで我々は、委員がプライベートジェットにいくら費やしたかも明らかにしたかったが、データセットに「プライベートジェット」というフレーズはない。データからでなく、業者から名目を取り寄せる必要があった。委員会が使っている業者が「アベラーグ」ということがわかったので、そこに問い合わせ委員が使った金額を得ることができた。

このケースでは、データを得る目的がはっきりしていた。見出しになる数字を見つけることだ。そこから先は、後からついてくる。

ブラックリストや除外されたものから始める方法もある。すなわち、そこにあるはずのないものについて調べれば、データからストーリーを簡単に導き出せるのだ! ファイナンシャル・タイムズとTBIJがコラボレーションした、EU構造基金のプロジェクトは、この方法がうまくいった事例だ。

我々はEU構造基金の受け取りが禁じられている会社や団体を定めた欧州委員会のルールを元に、データを請求していった。たとえば、それはタバコやタバコ製造者の支出といったものだ。

我々がタバコ会社や製造者、生産者の名前でデータを問い合わせしていくうちに、ブリティッシュ・アメリカン・タバコがドイツの工場をめぐって、150万ユーロを受け取っていたことが明らかになった。

この金銭のやりとりが欧州委員会の支出規則を逸脱するものであったため、データからすぐにストーリーを導き出せたわけだ。

データから何が見つかるかはわからない。だからまずはデータを見てみよう。恐れることはない。この方法は、大きい数字だとか、極端な数字だとか、もっとも一般的な数字だとか、はっきりとした特徴をあぶり出すときに、もっともうまくいくアプローチだ。

カーライン・バー, Citywire