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フィンランド議会選挙と運動資金

ここ数ヶ月、2007年のフィンランド総選挙での選挙運動資金にまつわる一連の裁判が行われている。

2007年の選挙後、記者たちは運動資金公表法制が政治家には無効であることを発見した。運動資金は基本的に政治家からの支持を買うのに使われ、彼らはフィンランドの法で定められたように資金を報告しなかったのだ。

事件後に法は厳格化された。2011年3月の総選挙後、Helsingin Sanomatでは運動資金にまつわる利用可能な全てのデータを精査することを決めた。新法では、選挙資金はすべて報告されねばならず、また1500ユーロ未満の寄付だけが匿名にできることを規定している。

1. データと開発者を探す

Helsingin Sanomatは2011年3月からHSオープンハッカソンを催している。フィンランドのコーダー、ジャーナリスト、グラフィック・デザイナーを社屋の地下フロアに招待するのだ。参加者は3つのグループに分けられ、アプリケーションや可視化ツールの開発を促される。これまでの3回のイベントにはそれぞれ60人程度の参加者があった。運動資金データは2011年5月のHS Open #2でフォーカスすべきものとして定めた。

フィンランド会計監査局は運動資金の記録当局である。これは簡単な部分だ。最高情報責任者のJaakko Hamunenが運動資金データベースにリアルタイムアクセスするウエブサイトを作った。監査局はこのデータベースを我々の要請からわずか2ヶ月で作り上げていた。

Webサイト Vaalirahoitus.fiは、今後すべての選挙の運動資金情報を報道や公衆に提供する。

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Figure 12. Election financing(選挙資金調達)(Helsingin Sanomat)

2. アイディア出しのブレインストーム

HS Open 2の参加者たちは、このデータに何をするかについて20種類のプロトタイプを考えだした。プロトタイプはすべてWebサイトで見ることができる(テキストはフィンランド語)。

Janne Peltolaというバイオインフォマティクスの研究者が指摘したのは、運動資金データは多くの相互依存があるという点で彼らの研究する遺伝子データに似ていることだった。バイオインフォマティックスの世界では、こうした相互依存をマッピングするのに使われるCytoscapeというオープンソースツールが存在する。データをCytoscapeにかけることで、非常に興味深いプロトタイプが得られた。

3. 紙のアイディアをウェブに実装する

運動資金にまつわる法は、選出された議員は選挙後2ヶ月以内に資金の報告を行わねばならないと定めている。これはつまり、実データが6月中旬まで揃わないということを意味する。HS Openでは締め切り前に提出した議員のデータしかなかったのだ。

また、データ形式にも問題があった。会計監査局はデータを2つのCSVファイルで提供していた。片方に運動経費の総額が、もう一方に全寄付者がリストアップされているのだ。これを結合し、寄付者、受領者、金額の3つのカラムから成るファイルを生成した。このデータ形式では、政治家が自己資金を使った場合、政治家Aが政治家AにXユーロ寄付した、と出ることになる。直感には反するが、Cytoscapeでは有効だった。

掃除と書式変換が終わったデータを、単純にCytoscapeに掛けた。会社のグラフィック部門がそれを元に全面サイズのグラフィックを作成した。

最後に美しいビジュアライゼーションを Webサイト 上に構築した。これは単なるネットワーク分析グラフィックではない。どれだけの運動資金が存在し、誰がそれを与えたか簡単に見て回れる方法を提供したかったのだ。最初の画面は議員間での資金分布だ。議員の名前をクリックすると、彼または彼女の資金の内訳が表示される。さらにはここで表示される個々の寄付者について、良い、良くないを投票することもできる。このビジュアライゼーションはSatumaaという広告代理店のJuha RouvinenとJukka Kokkoが作成した。

運動資金ビジュアライゼーションのウェブ・バージョンで使っているデータは、ネットワーク分析と同じものである。

4. データのパブリッシュ

国の会計監査局はデータを既に公表しており、我々が再度公表する必要はもちろん無い。しかしながら、我々はデータの掃除をして、より良い構造を与えているということで、これを公表することにした。データは クリエイティブ・コモンズ帰属ライセンス で出している。後に独立の開発者が複数、このデータのビジュアライゼーションを作成しているが、我々がパブリッシュしたデータを使ったものもいくつかある。

プロジェクトで使用したツールは以下の通りだ: データのクリーニングと分析にExcelとGoogle Refine、ネットワーク分析にCytoscape、ビジュアライゼーションにIllustratorとFlashである。FlashはHTML5にすべきだったが、時間切れだった。

学んだことは? おそらく一番重要な教訓は、データ構造とは大変なものである、ということだ。元データが適切なフォーマットになっていなければ、再計算と変換には多大な時間がかかるのだ。

Esa Mäkinen、Helsingin Sanomat