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機会格差

The Opportunity Gap(機会格差)は、それまで公開されたことがなかった合衆国教育省の公民権データを使い、Floridaのように機会均等を進めて富裕層と貧困層の学生にほとんど同等の高等教育アクセスを提供する州もあれば、Kansas、Maryland、Oklahomaのように貧困家庭の多い地区で機会が少ない州もあることを示したウエブサイトだ。

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Figure 1. The Opportunity Gap project (ProPublica)

データは3000人以上の学生がいる地区の全公立校をカバーしている。公立校の全学生のうち3/4以上が代表されることになる。データは我々のレポーターの一人が入手し、コンピュータ支援取材(CAR/Computer Assisted Reporting)ディレクターが非常に広範にクリーンアップしたものだ。

およそ3ヶ月というプロジェクトだった。ストーリーとニュース・アプリケーションに取り組んだのは全部で6名。エディター2名、レポーター1名、コンピュータ支援取材者1名、そして2名の開発者だ。ただしこの期間を通じてかかりきりだった者はほとんど居ない。

プロジェクトでは、我々のスキルが総合的に必要だった---分野の深い知識、データの扱い方の理解、デザインとコーディングのスキル、その他もろもろだ。さらに重要なのは、データの中にストーリーを見つける能力が要求されることだ。また、語られるストーリーだけでなくニュース・アプリケーションそのものに対しても、編集の能力が必要だった。

データのクリーニングと分析には主としてExcelおよびクリーニング用スクリプト群と、MS Accessも使った。ニュース・アプリケーションはRuby on Railsで書いて、JavaScriptをかなり広範に使った。

全体のストーリーに加えてカバレッジに含めた対話型ニュース・アプリケーションは、読者が自分たちに関わるこの国家的巨大データセットの中で、実例を見出し理解するためのものだ。読者は地元の学校を---たとえば Central High School in Newark, N.J.—など---を見つけ、さまざまな分野でどの程度の状態にあるか、すぐ見ることができる。続いて "Compare to High and Low Poverty Schools"(高貧困校や低貧困校との比較)"というボタンを押せば、他の高校について相対貧困度、上級の数学やAP(Advanced Placement、大学で単位換算される高度な授業)など、重要なコースをどの程度提供しているかが、すぐに表示される。たとえば上のCentral Highには横並びでMillburn Sr. Highの情報が表示される。Millburnではランチが無料または割引になる生徒は1%だけだが、その72%はAP科目を取っていると出る。反対のカラムに表示されるInternational Highでは85%の生徒が無料/割引ランチを得ており、AP科目を取るのは1%にすぎない。

これを使うことで、読者は知っていること---地元の高校---から知らないこと—​教育機会の分布の様子と、それを示す指標として貧困度がどのくらい使えるのか—​を理解できるのだ。

アプリケーションはFacebookとも統合してあるので、Facebookにログインして使えば、興味があるであろう学校を自動的に通知するようになっている。

ニュース・アプリケーション全体へのトラフィックは目覚しいものがあるが、我々が特に誇らしいのは、このアプリケーションが複雑なストーリーを語っている手法だ---そしてこれが、読者に自分のストーリーを語らせる助けになることだ。

政府データから始めるプロジェクトの常として、データにはかなりの掃除が必要だった。たとえばAP科目のクラスは30程度しかありえないのに、一部の学校は数百を報告していた。だから手作業でチェックしたり、電話で学校に確認、訂正する作業が非常にたくさん必要だった。

「遠い」ストーリーと「近い」ストーリーを両方ちゃんと語るアプリケーションにするということにも、本気で取り組んだ。つまり、読者に広く抽象的な国全体の様子を提示する、特に教育機会についての各州の行いを相対比較する方法によりそれをすることは必要であるが、こうした抽象化がデータの意味するところを不明瞭にしがちなので、地元の学校を見つけて地域の高貧困・低貧困校と比較できるようにもしたかった、ということだ。

この種のプロジェクトに取り組みたいデータ・ジャーナリスト志望者にアドバイスするとすれば、自分の材料をよく知り、かつ探究的になれ!と言うところだ。他の種類のジャーナリズムに適用されるルールはここにもすべて適用される。個々のファクトはどれも正しいものでなければならず、ストーリーがちゃんと語られていなければならない。そして—​特に—​注意すべきは、アプリケーションがストーリーに反したものになっていないかということだ。もし反していたら、どちらかが間違っているということであるから。

また、コーディングを学びたいと思うなら、一番重要なのは始めることである。授業や本や動画で学びたいと思っているかもしれないが---そしてどれについても非常に優れた教材があるがプロジェクトにまつわる本当に良いアイディアと完成までの締切を必ず持っていること。ニュース・アプリケーションでなければうまく表現できないストーリーが頭にあるなら、いまプログラミングを知らないことは障害にならないのだ!

Scott Klein, ProPublica