データの請求権
情報公開請求をする前にあなたは自分が探しているデータが既に利用可能でないか、他の人が既に請求済みでないかをチェックしておくべきだ。前章のケーススタディでは、どこをチェックすべきかについての示唆があった。もし、所望のデータを探しても探しても見つからないなら、正式な請求を申請しても良いだろう。ここでは、より効果的に請求できるいくつかのコツを紹介する。
- 時間を節約するために、あらかじめ計画を立てよう
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情報を探すことに着手する時はいつでも、正式にアクセス請求を行うことを考えよう。すべての可能性をトライして疲れきってしまう前に。リサーチの最初の段階で請求を行っておき、他の調査を並行して進めることによって、時間を節約することができる。手続きの遅れに備えておこう:お役所で手続きに時間がかかることはあるものだと、ある程度の覚悟をしておいた方が良い。
- 料金に関するルールを確認しよう
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請求を開始する前に、請求や情報の入手にかかる料金に関するルールを確認しておこう。そうすることで、役人があなたに突然お金を要求してきても、あなたは自分の権利を主張できるだろう。あなたは、コピーや郵送のコストを省くために電子文書での受け取りを依頼できる。申請書には電子フォーマットの情報を希望する旨を書いておこう。これで、電子的な情報が存在する限り、料金の発生を防ぐことができる。とはいえ、電子化されていない情報であっても、最近は文書をスキャンすることができるので、それを電子メールに添付して送付することは可能だ。
- 自分の権利について知ろう
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行動を起こす前に、自分の権利について知っておこう。そして、自分の立ち位置がどこで、役所が何に対して義務を負っていて何に対しては義務を負っていないかを知っておこう。例えば、ほとんどの情報公開法では、あなたの請求に対して当局が返答を行わなければならないタイムリミットが規定されている。世界的に、その期限は数日から1ヶ月の範囲である。請求を行う前に、その国での期限について調べておき、請求した日付を記録しておこう。
政府はあなたにデータを処理する義務はないが、彼らが持っているデータをすべて与える義務はある。そしてもし、政府の法的能力に照らし合わせた結果、彼らが持っているはずのデータであれば、彼らは確かにそれをあなたに提供する義務があるのだ。
- 自分の権利について知っていることを伝えよう
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通常、法的には請求の中で情報公開法について言及する必要はないが、それを行うことをお勧めする。なぜなら、それによって、あなたが自分の法的権利について知っていることを示せるので、その後のプロセスが法律に従って正しく行われる可能性が高まるからだ。特に、EUに対する請求では、法令1049/2001に則った情報アクセス請求であることを明確に記述するのがベストである。
- 請求はシンプルに
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どんな国でも、最初はシンプルな情報請求から始めるのが良い。その後、得られた情報に対して徐々に質問を追加していこう。これによって、「複雑な請求」という理由で公的機関が仕事を先延ばしするリスクを避けることができる。
- 請求の範囲を明確に
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役所の一つの部門で所有している情報への請求の方が、役所全体を調べて回る必要がある情報への請求よりも早く回答が得られるだろう。役所が第三者機関(例えば、情報提供を行う民間企業や関連省庁)に問い合わせを行わなければならないような請求は、通常時間がかかるものだ。粘り強くやろう。
ファイルキャビネットの中を想像してみる 政府のファイルキャビネットにはどんなデータが並べられているか想像してみよう。例えば、交通事故の後、警察から白紙のフォームを受け取ったら、交通事故に関して警察がどんな情報を取得したり、取得しなかったりしているかを推定できる。
- 請求は具体的に
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請求を申請する前に振り返ってみよう:あいまいな部分がないか?異なる自治体や政府組織のデータを比較しようとしている場合は特に重要だ。例えば、「過去3年間」のデータを依頼した場合、ある組織ではカレンダーイヤーで過去3年間のデータを送ってくるかもしれないし、別の組織では年度単位での過去3年分のデータを送ってくるかもしれない。この場合、データを直接比較できなくなってしまう。もし、請求の真の理由を、もっと一般的な理由で隠したい場合でも、請求の範囲が広くなりすぎたり、不明確になりすぎると、役所が対応する気持ちをくじくことになるので、請求の範囲の広さはほどほどにとどめておくべきである。具体的で明確な請求は、より早く正確な回答を引き出せるものだ。
- 複数の請求を申請しよう
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どこに請求を出せばいいのか確信が持てない場合、同時に複数の組織に請求を申請すればよい。場合によっては、複数の組織が異なる回答をくれるかもしれない。その場合、あなたが調査しようとしているテーマについて、より良い全体像を知る助けになるだろう。
- 海外にも請求しよう
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請求は電子的に行われることが多くなってきているので、あなたがどこに住んでいるかは関係ない。また、あなたが請求を行いたい国に住んでいなくても、その国の大使館に請求することができるし、大使館はあなたの請求をしかるべき組織に転送しなければならない。まず、関係する大使館にそれが可能かを確認する必要がある。なぜなら、大使館職員は情報公開法について教育されていない可能性があり、その場合は直接、その国の政府や自治体に請求を申請した方が安全だからだ。
- 試験的な請求で様子をみよう
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もし、多くの政府組織に同じ請求を行う場合、最初は試験的に2〜3の組織に対して請求してみよう。これによって、必要なデータを取得するために正しい言葉遣いがなされているか、現実的にあなたの請求に回答することが可能なのかどうかを判定できる。その結果に応じて請求の文書を修正し、改めて対象となる組織全部に送付すればよい。
- 例外を予測しよう
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もし、あなたの請求に対して何らかの例外が適用される可能性があるなら、公にしにくい情報と常識的に例外が適用されない情報を分けて、それぞれ別々に請求を行おう。
- ファイルへのアクセスを要求しよう
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もし、あなたが情報が保持されている組織の近くに住んでいるなら(例:文書が保管されている主要都市)、オリジナルの文書を調べさせてくれるよう、頼むことができる。これは、多くの文書にまたがって記述されているかもしれない情報を調べる時の助けとなる。通常、このような調査は無料であり、あなたの都合の良い時間に行うことができることになっている。
- 記録をつけよう!
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請求のコピーをとって保管しておこう。あとで「確かに請求が行われた」ことを証明したり、「回答の不履行」を主張したりするために。請求のやりとり自体を記事にしようとする場合も、これは証拠となる。
- 請求を公にしよう
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あなたが請求を行ったことを公にすることで、回答をスピードアップさせよう。もし、あなたが情報公開請求を行ったことをニュースとして記事にしたり放送したりすれば、政府組織にとってその請求を処理し回答しなければならないというプレッシャーになる。もし請求に対する回答があれば、その情報をアップデートできるし、さもなければ、締め切りを過ぎても回答がなかったことをニュースにできる。こうすることで、国民に対して情報公開法に関する権利と、実際の活用方法を教育することができる。
Note
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請求に関する一連のやりとりを行ったり、それをweb上で可視化する場合に使える便利なサービスがいくつかある。イギリス政府向けには What Do They Know? 、ドイツ政府向けには Frag den Staat 、EU機関向けには Ask the EU である。また、 Alaveteli プロジェクトは世界の数十カ国で同様のサービスの実現を支援している。 |
- 同僚を巻き込もう
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もし、同僚が情報公開法に懐疑的なら、彼らを説得するためには、情報公開法を通じて得られた情報をベースにした記事を書くことが一番の方法だ。あなたがが書いたり放送したりする記事で情報公開法を利用したことについて触れることは、権利について国民の意識を高め、その価値を強めるという意味でも推奨される。
- 生データを要求しよう
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もし、コンピュータを使ってデータを分析、加工したい場合、電子的で機械が読み込めるフォーマットでデータを提供してもらえるよう明確に請求する必要がある。例えば、予算情報を「会計ソフトによる分析に適したフォーマット」で依頼できる。同様に、ある情報について、「集計前のデータ」や「粒度の細かいデータ」を請求することもできる。この点についての詳細は this report を参照。
- 情報公開法が適用されていない組織に関する情報も請求する
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場合によっては、情報公開法が適用されないNGO、民間企業、宗教団体や他の組織からデータを手に入れたいと思うことがあるかもしれない。しかし、そのような組織であっても、情報公開法が適用されている政府や自治体を通じて情報を入手することは可能である。例えば、政府や内閣が特定の民間企業やNGOに対して資金を提供したり取引を行っているかどうかを質問したり、裏づけとなる資料を要求することができる。もし、情報公開請求についてさらなる支援が必要な場合、ジャーナリストのためのWebサイト Legal Leaks toolkit for journalistsのツールキットを調べるとよい。
— Helen Darbishire (Access Info Europe), Djordje Padejski (Knight Journalism Fellow, Stanford University), Martin Rosenbaum (BBC), and Fabrizio Scrollini (London School of Economics and Political Science)